「おくやみコーナー」「おくやみ窓口」のことをご存じでしょうか?
各地の自治体で設置が進んでいる、ご家族が亡くなられた際の煩雑な行政手続きをワンストップで行うためのサービスです。遺族の負担を軽減し、手続き漏れを防ぐことを目的としています。
「おくやみコーナー」のようなワンストップサービスの導入は、死亡・相続手続き等のデジタル化・オンライン化を推進する政府の支援もあって、近年急速に拡大しました。高齢化社会の進展を背景に、自治体側にも遺族支援のニーズが高まったことが要因の一つと考えられます。
この普及を技術的に支えたのが、かつての内閣官房IT総合戦略室が開発した「おくやみコーナー設置自治体支援ナビ」です。これは自治体が無料でダウンロードし、カスタマイズして利用できるオープンソースのシステム基盤です。実際の開設や運営については、鎌倉新書のような民間企業が事業委託を受けてサポート体制をしいています。
「おくやみコーナー」の利用は事前予約制としている自治体がほとんどです。
この制度を利用する場合の一般的な手続きの流れは以下のようになります。
- 死亡届の提出
- 窓口で死亡届(死亡を知った日から7日以内)を提出し、火葬許可証などを取得します。
- おくやみ窓口の予約
- 電話またはオンラインで「おくやみコーナー」の利用を予約します。亡くなられた方の情報や来庁者の情報などを伝え、必要な手続きの確認が行われます。
- 予約は、死亡届提出後、数日〜1週間程度経ってからが推奨されることが多いです(死亡届出の情報が反映される必要があるため)。
- 必要書類の準備
- 本人確認書類、印鑑(朱肉を使うもの)、預貯金通帳(相続人代表のもの)、亡くなられた方の保険証や年金手帳などを準備します。
- おくやみ窓口での手続き
- 予約した日時に来庁します。職員が、亡くなられた方の情報に基づき、必要な行政手続き(国民健康保険、介護保険、後期高齢者医療制度、年金、児童手当など)を特定し、申請書の代行作成や説明が行われます。
- 自治体によっては、この窓口で複数の手続きをワンストップで受付する場合と、必要な手続きを案内する案内型の形態があります。
- 各担当窓口での手続き(必要な場合)
- ワンストップで完了しない手続き(例えば、市役所以外の機関での手続きや、詳細な審査が必要な手続き)については、各担当窓口への案内を受け、残りの手続きを行います。
多くの自治体が「おくやみハンドブック」などの名称で手続きの全体を説明する冊子を提供しており、手続きに必要な書類や、各種手続き等の期限、問い合わせ先などが案内されています。家系図や故人の財産の一覧表なども作成できるようになっています。
「おくやみコーナー」で、行政書士も専門家のひとりとしてサポート業務を行っている自治体もあります。
遺言・相続関連業務は行政書士の重要な業務の一つですので、その知識を生かして、ご遺族にとって力強い相談相手となれることと思います。
参考
- デジタル庁「死亡・相続手続のオンライン・デジタル化」
- 自民党「おくやみコーナー 死後手続き一括案内」
- 鎌倉新書「鎌倉新書のおくやみコーナー開設・運営支援」
- 政府CIOポータル(現在はデジタル庁への移管に伴い更新停止)「死亡・相続ワンストップサービスの推進」
