産業廃棄物収集運搬業を始めたい方へ 許可取得前に知っておきたい重要ポイント



「知り合いの業者から頼まれた廃材を運びたい」

「解体業を始めたので、産廃の運搬も自社でやりたい」

「軽トラックがあるので収集運搬業を始めたい」

こうしたご希望をお持ちで、どこから手をつけたらいいかお悩みの方は多いと思います。産業廃棄物の収集運搬業は単なる運送業ではなく、廃棄物処理法に基づく許可が必要な業務です。また、何を運ぶかによって必要な設備や注意点も変わります。

これから新規参入を考えている方に向けて、許可取得前に知っておきたい基本事項を整理してお伝えします。


廃棄物処理の基本的な考え方

廃棄物処理法では、産業廃棄物を排出した事業者がその処理について責任を負うという「排出事業者責任」の原則が採られています(法第11条第1項)。

原則として、廃棄物を出した事業者が自ら適正に処理する責任を負います。自社での収集運搬や処分が難しい場合に限り、法律の定める制限のもと、許可を受けた産業廃棄物処理業者へ委託することが認められています(法第12条第5項)。

この仕組みがあるため、誰でも自由に産業廃棄物を運搬できるわけではありません。収集運搬業や処分業には許可制度が設けられており、排出事業者側も許可業者へ適切に委託する義務を負っています(委託基準)。


許可はどこに申請するのか

収集運搬業の許可を検討する際、まず整理すべきなのは「何を、どこからどこへ運ぶのか」という点です。

産業廃棄物収集運搬業(積替え保管を除く)の許可は、原則として以下の2つの場所を管轄する都道府県ごとに必要です。

  • 産業廃棄物を積み込む場所(廃棄物が排出される場所)
  • 産業廃棄物を下ろす場所(積替保管施設や処理施設のある場所)

たとえば、東京都の現場で積み込んで埼玉県の処分場へ運ぶ場合、東京都と埼玉県の両方の知事許可が必要となります。

政令指定都市・中核市(政令市)の扱いについて

産業廃棄物処理については、政令市も独自の許可権限を持っています。ただし、積替え保管を行わない収集運搬業については、その政令市が含まれる都道府県の許可を受けていれば、市独自の許可は不要という取扱いが一般的です。

たとえば、横浜市で積み込む場合は神奈川県の許可で対応でき、さいたま市で積み込む場合は埼玉県の許可で対応できます。ただし、積替え保管や処分施設を市内に設ける場合には各政令市等の独自許可が別途必要となります。収集運搬だけなのか、積替え保管や処分も行うのかによって、必要な許可の種類が変わります。

※政令市ごとに条例等による独自の取扱いがある場合もありますので、管轄の行政機関への事前確認をおすすめします。


産業廃棄物とは何か

事業から出るゴミがすべて産業廃棄物になるわけではありません。法律上、産業廃棄物として扱われるものは廃棄物処理法で20種類に限定されており(法第2条第4項、施行令第2条)、それ以外は原則として一般廃棄物(事業系一般廃棄物)に分類されます。

この中には、あらゆる業種から発生すれば産業廃棄物となるものと、特定の業種から発生した場合に限って産業廃棄物となる「業種限定のある品目」があります。

廃棄物の品目産業廃棄物となる主な業種該当しない場合の例
紙くず建設業、パルプ・製紙・印刷・製本業など一般オフィスのコピー用紙、小売店の梱包紙など
木くず建設業、木材・家具・パルプ製造業など(※物品賃貸業の木製パレットは業種限定なし)一般企業のオフィス移転で出る木製デスクなど
繊維くず建設業、繊維工業(衣服製造・紡績業など)アパレル小売店の売れ残り衣服など
動植物性残さ食品製造業、医薬品製造業など飲食店・ホテルの残飯、スーパーの期限切れ食品など

「ゴミの種類」だけでなく、「どの業種から出たものか」を確認することが実務上非常に重要です。


収集運搬業に必要な施設・設備とは

事務所自体は自宅や賃貸でも要件を満たせば問題ありません。ただし、運搬する産業廃棄物を適正に取り扱える車両・容器が必要です。

運搬する廃棄物の種類によって、求められる設備が変わります。

  • 汚泥:飛散・流出を防止するための水密性コンテナや吸引車など
  • 廃プラスチック類:荷台からの飛散を防止するための飛散防止ネットやシートなど
  • 廃油:漏洩を防止するためのドラム缶や密閉容器など

許可申請では、「運ぶ予定の品目」と「それを安全に運べる車両・容器」の整合性が厳格に審査されます。


実務でよくある誤解と注意点

「黒ナンバー(緑ナンバー)は必須か?」について

産業廃棄物収集運搬業は廃棄物処理法に基づく許可業であり、一般的な貨物自動車運送事業とは制度の趣旨が異なります。国土交通省の事務連絡(「貨物自動車運送事業法における廃棄物の運送に関する取扱いについて」)においても、「廃棄物処理法に基づく処理責任の一環として行われる廃棄物の運搬については、直ちに貨物自動車運送事業に該当するものではない」という見解が示されています。

そのため、必ずしも黒ナンバー(軽自動車)や緑ナンバー(普通車の営業ナンバー)でなければならないわけではなく、白ナンバー車両で許可を取得している事業者も多くいます。

ただし、実際の契約形態や運賃収受の実態によっては、貨物自動車運送事業法との関係が問題になる場合もあります。特に近年の軽貨物運送に関する規律の変化もあるため、事業形態を整理した上で進めることをおすすめします。

「有価物であれば許可は不要」について

「売れるもの(有価物)だから廃棄物処理法の対象外」と自己判断されるケースがありますが、有価物か廃棄物かは取引の形式だけでなく、物の性状や経済的合理性などの実態に基づいて総合的に判断されます。実態として廃棄物とみなされるものを許可なく運搬した場合、廃棄物処理法第25条に基づく罰則の対象となる可能性があります。有価物と産業廃棄物の判断基準については、こちらの記事をご覧ください。


おわりに

産業廃棄物収集運搬業は、物を運ぶだけの業務ではありません。何を運ぶのか、どの業種から出たものか、どこで積んでどこへ運ぶのか、どのような車両・容器で運搬するのか——これらすべてに整合性が求められます。

新規参入を検討されている場合は、まず具体的な事業内容を整理した上で、要件に合った準備を進めることが大切です。許可取得の手続きや事業計画の策定、取扱品目の確認でお困りの際は、お気軽にご相談ください。

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本記事は2026年5月時点の関係法令、行政通達等に基づき執筆しています。


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