著作権の「国庫帰属」と「パブリックドメイン」


かつては文豪と言われるような人たちは妻(!)も子どももたくさんいて、死後に全く相続人がいない、という状況はごく稀であったと思われます。
ですが、昨今は状況が異なります。おひとりさまも増え、相続人がいないまま亡くなる著作者は今後だんだんと多くなるでしょう。

著作者が亡くなったあと、相続人が誰もいない場合、その著作権はどうなるのでしょうか。

日本の著作権法では、財産権である著作権と、一身専属権である著作者人格権が分けて考えられています。
著作者人格権は相続したり譲渡したりはできませんが、著作権は他の財産と同じく、相続や譲渡が可能です。

民法は第六章で相続人がいない場合の財産の処分方法を定めており、処分がなされなかった場合、その財産は国庫に帰属します。

民法 第959条(残余財産の国庫への帰属)
「前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。」

では、国が著作権を持つことになるのかというとそうではなく、著作権法の以下の規定により著作権は消滅します。

著作権法 第62条 (相続人の不存在の場合等における著作権の消滅)
著作権は、次に掲げる場合には、消滅する。
一 著作権者が死亡した場合において、その著作権が民法第959条(残余財産の国庫への帰属)の規定により国庫に帰属すべきこととなるとき。

原則として、著作者の死後70年は著作権が保護されるところ、相続人がいなければ、著作権自体がなくなってしまい、いわゆる「パブリックドメイン」の状態となってしまうのです。
そのような状況に陥らないようにするためには、相続人がいない著作者は遺言で、出版社なり知人なりに著作権を相続させる旨の意思を表明しておくなど、生前の対策が必要となります。


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