AI学習と著作権 日本とアメリカの比較


アメリカは訴訟が盛んな国ですが、AI関連でも多くの訴訟が行われています。

特にChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)関連の訴訟については、「ChatGPT Is Eating the World」という著名なサイトにまとめられています。この記事の執筆時点での最新情報では、2025年10月24日時点で米国全土で54の訴訟が係属中です。

日本とアメリカでは著作権の扱いで異なる点が多々ありますが、AI学習に関しては以下のような大きな違いがあります。

日本の著作権法:「AI学習のみ」であれば原則承諾不要

日本では、平成30年の著作権法改正で第30条の4(情報解析のための複製等)が新設されました。

  • 規定の概要: 「著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し、又は他人に享受させることを目的としない」場合には、AI学習のためには原則的に著作者の許諾が不要であると規定されました。
  • 解釈: 「AI学習のみ」であれば通常は著作物の内容を鑑賞・享受する目的ではないため、AIモデルのトレーニングに著作物を利用する行為自体は、原則として著作権侵害とならない、という考え方です。(ただし著作者の利益を害するような場合は例外となります。)

アメリカの著作権法:従来からあるフェア・ユース規定を適用

一方アメリカでは、著作権法第107条に定められたフェア・ユース規定が適用されます。

  • 規定の概要: フェア・ユースが認定された利用では、著作権侵害にならない、という包括的な定めです。これは、日本の著作権法が無許諾利用が可能なケースを限定列挙しているのとは対照的です。
  • 認定基準: フェア・ユースは、以下の4つの観点を総合的に考慮して、あくまでケースバイケースで認定されます。
    1. 使用の目的及び性質(変容性があるか)
    2. 著作物の性質
    3. 利用された量及び実質性
    4. 著作物の潜在的市場価値への影響

AI企業側の言い分としては、AI学習に関しては、元の著作物をそのままの目的で利用するのではなく、新たな知識やモデルを生成するための「変容的利用(Transformative Use)」であるとしていることが多いです。
ですが、変容的利用といってもそれ自体元の著作物と競合するようであれば問題であり、裁判でもそこが争点となっているようです。

著作権法第30条の4があるから日本ではAI学習が著作権侵害にならないと広く認められていると言えるのか、といえば、そうではありません。近年では、出版社、アニメ制作会社、漫画家、実演家団体などが声を上げ、無断利用にたいする社会的な圧力はますます強まっています。また、そもそもAI学習の段階から許諾を必要とするべきなのではないかと考えられるようになっています。

アメリカでの数々の裁判の行方も気になるところですが、今後もAI技術の発展と著作権保護との間の問題はますます大きくなるでしょう。

参考


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