2026年スタート「未管理著作物裁定制度」とは


他人の著作物等を利用したいと希望しても、「権利者が誰か分からない」または「権利者が分かっても連絡することができない」という場合があります。そのようなとき、利用希望者が文化庁長官に裁定を申請し、補償金を供託する(預ける)ことでその著作物を利用できる制度があります(著作権法第67条「著作権者不明等の場合における著作物の利用」)。

ただし、裁定申請を行うための前提として、所定の措置(名簿やウェブサイトの閲覧、著作権等管理事業者等への照会、日刊新聞紙等への掲載による情報提供の呼びかけなど)により、権利者と連絡を取るための「相当な努力」を払う必要があります。

それでも権利者と連絡を取れない場合に限り認められる可能性があるのですが、事前にメールで担当者との綿密なやりとりが必要で、実際には申請までに数カ月から半年以上かかることも多く、ハードルはかなり高いです。

2026年度から始まる新制度

このような従来の裁定制度とは別に、2026年度からスタートする新制度が、「未管理著作物裁定制度」です。(令和5年の著作権法改正で制定)

利用希望者は、文化庁に裁定を申請し、審査の結果裁定された場合、補償金を供託することで利用を開始できます。これにより、利用されずに眠っている著作物の価値が再発見されることを目指しています。

ただし、その間に権利者が申し出て請求すれば、必要な手続きを経たうえで利用を停止したり補償金を受け取ったりできます。

対象となる「未管理」の著作物とは

この裁定制度の対象となるのは、「集中管理がされておらず、その利用可否に係る著作権者等の意思が明確でない著作物等」で、以下のようなものが「未管理」であると判断されます。

  • 著作権等管理事業者に管理が委託されていない
  • 「無断転載禁止」や「営利目的でない場合は自由利用可」などの利用のルールが示されていない
  • 連絡先が示されていない

このうち、利用ルールや連絡先は、著作者のホームページや作品、SNSプロフィールなどに表示されていればよいので、前回のブログで取り上げたようなコピーライトの記載も有効です。

著作者にとっては、自分の著作物について意外なニーズがあることの発見につながるかもしれません。しかし、気が付いて請求をすれば利用停止したり利用料を受け取ったりできるとは言え、知らないうちに利用されてしまう可能性もありますし、あとから請求の手続きをとるのはやはり大変な手間です。

大切な自分の作品には、著作権を管理している意思表示をしっかりと行うのがよいでしょう。

参考


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