「高校生歓迎」のごみ収集アルバイト――その求人、法律違反になっていませんか?


令和8年5月、厚生労働省は廃棄物処理業の事業主に向けて「ごみ収集等の業務に満18歳未満の高校生等を就業させる場合に注意していただきたいこと」と題するリーフレットを発行しました。バイトル・タウンワークなど大手求人サイトでは「ごみ収集車」「廃棄物収集」のアルバイト求人に「高校生歓迎」フィルタが存在し、実際に該当求人が表示されます。その中には「一般廃棄物および産業廃棄物の収集運搬業務の作業員」という内容が混在したものも確認できます。

【注記】本記事は厚生労働省発行リーフレット(令和8年5月)および令和8年6月現在の現行法令に基づき作成しています。法令の改正や行政解釈の変更がある場合は、最新情報を都道府県労働局・労働基準監督署またはe-Gov法令検索でご確認ください。


求人票に「高校生歓迎」と記載すること自体は直ちに違法ではありません。しかし、実際に就業させた際の作業内容によっては労働基準法違反となり得る状況が生じています。本記事では、その法的根拠と実務上の注意点を整理します。


なぜ「今」リーフレットが出たのか――3つの背景

① 廃棄物処理業は全産業随一の労災多発業種

厚生労働省「労働災害動向調査」によると、一般・産業廃棄物処理業の度数率(100万延べ実労働時間当たりの死傷者数)は全産業平均の約3.6倍に達しています。事故の型別では「はさまれ・巻き込まれ」が上位を占め、パッカー車(機械式ごみ収集車)のテールゲートや回転板による重大事故が繰り返し発生しています。

平成30年には、熊本県八代市において10代の派遣男性がごみ収集車の後部扉と車体の間に挟まれて死亡する労働災害が発生し、業者が労働安全衛生法第20条違反で書類送検されています。

② 深刻な人手不足が若年層の採用を加速させている

廃棄物処理業界は慢性的な人手不足にあります。産業廃棄物処理業では「従業員不足」が経営上の最大課題として挙げられ続けており、高校生・若年層を対象とした募集が増えています。

マイナビ「高校生のアルバイト調査」によると、アルバイトをしている高校生の割合は次のように推移しています。

調査年就業率前年差
2020年(コロナ禍)19.4%過去最低
2023年23.8%
2024年26.5%+2.7pt
2025年27.4%+0.9pt(調査開始以来最高)

③ 既存ルールはあったが、現場への浸透が不十分

年少者の危険有害業務への就業制限は、労働基準法第62条によって数十年前から規定されています。廃棄物処理業における労働安全衛生対策は昭和57年の通知以来、環境省(旧厚生省)・旧労働省が連携して安全管理要綱を整備してきた歴史があります。しかし、これらの規制が求人票の段階で反映されていないケースが存在します。リーフレットの発行は、そうした実態に対する行政からの明確なメッセージです。


廃棄物収集業に関わる3省庁の法的枠組み

廃棄物収集業は、3つの省庁の規制が重なり合う複合的な業種です。許可を持っているだけでは足りない理由がここにあります。

環境省管轄:廃棄物処理法

廃棄物の収集・運搬業の許認可は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(昭和45年法律第137号)が根拠であり、環境省が所管します。一般廃棄物の収集・運搬業は同法第7条第1項に基づき市区町村長の許可が、産業廃棄物の収集・運搬業は同法第14条第1項に基づき都道府県知事等の許可がそれぞれ必要です。

国土交通省管轄:貨物自動車運送事業法との関係

廃棄物収集車が公道を走ることから、貨物自動車運送事業法(平成元年法律第83号)との関係が問題となります。環境省・国土交通省の両省の事務連絡によると、廃棄物処理事業者が自ら処理施設を保有し収集から処分まで一体的に行う場合には、当該運搬行為は廃棄物処理業の付帯行為として、同法第3条の許可(いわゆる緑ナンバー)の対象とならないとされています。ただし、専ら廃棄物を有償で運搬する態様によっては同法が適用され得ると整理されており、事業の実態に即した確認が必要です。

厚生労働省管轄:労働基準法

廃棄物収集業で働く労働者の就業制限については、厚生労働省が所管する労働基準法が適用されます。年少者の就業制限はこの法律に根拠があります。


年少者の就業制限――根拠条文と適用範囲

労働基準法第62条(現行条文)

現行の労働基準法第62条第1項は以下のとおり規定しています。

使用者は、満18才に満たない者に、運転中の機械若しくは動力伝導装置の危険な部分の掃除、注油、検査若しくは修繕をさせ、運転中の機械若しくは動力伝導装置にベルト若しくはロープの取付け若しくは取りはずしをさせ、動力によるクレーンの運転をさせ、その他厚生労働省令で定める危険な業務に就かせ、又は厚生労働省令で定める重量物を取り扱う業務に就かせてはならない。

労働基準法第62条第1項

「その他厚生労働省令で定める危険な業務」の具体的範囲は、年少者労働基準規則第8条(昭和29年労働省令第13号)に列挙されています。

第62条第2項では、毒劇薬・毒劇物その他有害な原料若しくは材料を取り扱う業務、著しくじんあい若しくは粉末を飛散し若しくは有害ガス若しくは有害放射線を発散する場所または高温若しくは高圧の場所における業務等についても年少者の就業を禁止しています。その業務の範囲も厚生労働省令(年少者労働基準規則)で定められています。

違反した場合の罰則:労働基準法第119条により、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金。

年少者労働基準規則と産業廃棄物の関係

産業廃棄物の収集・運搬作業は、廃棄物の内容によっては年少者労働基準規則第8条(安全上有害な業務・衛生上有害な業務)に該当し得ます。

産業廃棄物には鉛・水銀・クロム・石綿などの有害物質が含まれる可能性があり、同規則が列挙する「水銀・砒素・鉛等の有害物を取り扱う業務(32号)」「鉛・水銀・クロム等の有害物のガス・蒸気・粉じんを発散する場所における業務(33号)」「土石等のじんあい・粉末を著しく飛散する場所における業務(34号)」等に抵触する可能性があります。

厚生労働省リーフレットが産業廃棄物の収集等について「廃棄物の種類を問わず年少者は就業不可」と明示しているのは、こうした法的背景に基づいています。


具体的にOK・NGとなる作業

廃棄物の種類による就業可否

廃棄物の種類年少者の就業
一般廃棄物(特別管理一般廃棄物以外)の収集等(ただし下記禁止作業を除く)
特別管理一般廃棄物※の収集等不可
産業廃棄物の収集等不可(廃棄物の種類・内容を問わず)
※特別管理一般廃棄物:一般家庭等から排出される廃棄物のうち、爆発性・毒性・感染性などを有するもの(廃棄物処理法第2条第3項)

パッカー車での絶対禁止作業

  • ごみ投入口にごみを投入する作業など、テールゲートに近接して行う作業
  • 上昇したテールゲートの下に立ち入って行う作業

リーフレットには、実際の重大災害として次の事例が記載されています。

  • 回転板を連続運転中に、身体がテールゲート内に入り込み頭部から巻き込まれた事例
  • ごみ詰まりを解消しようと両手で押し込んだところ、プレスプレートに両手を挟まれた事例
  • 別の作業員がテールゲートを誤操作し、確認中の作業者の上半身を挟んだ事例

年少者が従事できる作業の例

  • 機械式ごみ収集車を使用する場合:分散しているごみ捨て場からごみ収集車の近くまでごみを運ぶ作業(ただし、ごみの投入は18歳以上が行い、作業中テールゲートに近接させないこと)
  • 機械式でないトラックを使用する場合:ごみを荷台に積み込む作業

「高校生歓迎」求人票が抱える構造的問題

大手求人サイトにおいて「ごみ収集車」「廃棄物収集」カテゴリに「高校生歓迎」フィルタが存在し、実際に求人が存在することが確認できます。その中には、「一般廃棄物の収集運搬および産業廃棄物の収集運搬業務の作業員」という内容が混在したものも存在します。

求人票に「高校生歓迎」と記載すること自体は直ちに違法ではありません。しかし、実際に就業させた際の作業内容が労働基準法第62条または年少者労働基準規則の禁止規定に抵触する場合、「求人票に記載していた・知らなかった」という事情は法律上の免責事由にはなりません。使用者責任を負うのは事業主です。


事業主として確認が必要な保護規定一覧

年少者を雇用する際は、就業制限以外にも以下の規定への対応が必要です。特に労働基準法第57条(年齢証明書等の備付け)は見落とされがちですが、万一の際に年齢確認ができない状態は重大なリスクとなります。

保護規定の内容根拠条文
年齢証明書等の備付け(必須)労働基準法第57条
労働条件の明示同法第15条
未成年者の労働契約締結の保護同法第58条
未成年者の賃金請求権同法第59条
労働時間・休日の制限同法第60条
深夜業の制限(午後10時〜午前5時)同法第61条
危険有害業務の就業制限同法第62条
坑内労働の禁止同法第63条
賃金の支払同法第24条、最低賃金法第4条

行政書士の立場から:法律違反リスクを「事前に防ぐ」ために

廃棄物処理業において年少者雇用をめぐる法律違反が起きた場合、刑事罰(労働基準法第119条)にとどまらず、廃棄物処理法上の許可に関わる問題に発展する可能性があります。廃棄物処理法第7条の3および第14条の3は、許可業者に対して「事業の適正な実施が確保できなくなった」場合の許可取消しを規定しており、労働法令の重大違反がその端緒となるケースも考えられます。

行政書士は、廃棄物処理業の許可申請・更新手続の代理を業務として行うことができます。その際、以下のような予防的アドバイスを提供することが可能です。

① 求人票の事前チェック

「高校生歓迎」と記載する場合、実際に年少者が従事する作業が労働基準法第62条・年少者労働基準規則の禁止規定に抵触しないかを事前に確認する仕組みを作ること。産業廃棄物収集運搬業の許可を持つ事業者が一般廃棄物も取り扱う場合、作業の分離・管理が特に重要です。

② 業務フローの文書化

「どの作業を誰が行うか」を明記した安全作業手順書を作成し、年少者が禁止作業に接触しない運用を文書で担保すること。これは廃棄物処理法上の適正処理基準(廃棄物処理法施行令第3条等)への対応とも連動します。

③ 許可更新時の包括的確認

廃棄物処理業の許可更新の機会に、労働法令遵守状況を包括的に見直すことが、許可の安定的な維持につながります。


(参考)主な関連法令・資料

内容についてご不明な点は、都道府県労働局・労働基準監督署、または廃棄物処理業の許可手続に精通した行政書士にご相談ください。

📞 初回相談無料 ✉️ オンライン相談対応可


Back to top