前回は、新規許可の取得に必要な以下の4つの基本要件のうち、最も早く動き出す必要がある「① 知識・技能の要件(講習会)」について解説しました。
今回は、2つ目の要件である「② 適正性の要件(欠格要件)」について詳しく見ていきます。 「うちはクリーンな会社だから大丈夫」と思っていても、法律の規定(廃棄物処理法第14条第5項第2号)を正しく理解していないと、申請後に思わぬ落とし穴にはまってしまうことがあります。実務上で特に注意すべきポイントを整理して解説します。
欠格要件(欠格事由)の具体的な内容
欠格要件とは、簡単に言うと「過去に重大な法律違反を犯しているなど、産業廃棄物を適正に扱うことができないと判断される基準」のことです。
産業廃棄物の処理は、一歩間違えれば不法投棄などの深刻な環境破壊につながるため、事業を行うにふさわしくない人を排除する厳しい基準(廃棄物処理法第14条第5項第2号イ、および同法第7条第5項第4号など)が設けられています。
具体的には、以下のような事由に1つでも該当すると、許可を受けることができません。
💡 主な欠格事由の例
- 心身の機能の障害: 精神の機能の障害により、廃棄物処理業を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
- 破産者: 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 刑罰歴: 拘禁刑以上の刑、または廃棄物処理法などの特定の法律違反で罰金刑を受け、その執行が終わってから5年を経過していない者
- 処分の取消歴: 過去に産業廃棄物処理業の許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過していない者
- 暴力団関係: 暴力団員である、または暴力団員でなくなってから5年を経過していない者
ここで実務上ポイントとなるのは、すべての法律の罰金刑が対象になるわけではないという点です。廃棄物処理法はもちろん、浄化槽法、大気汚染防止法、労働基準法、刑法(傷害罪や暴力行為など)といった、特定の法律で罰金刑を受けた場合には欠格事由に該当します(※通常の交通反則金などは原則として該当しません)。
審査の対象となる「関係者」の範囲
欠格要件の審査において、最も見落とされやすいのが「誰が審査されるか」という範囲です。
役所に申請書類を提出すると、社長一人だけでなく、会社の運営に影響力を持つ関係者全員のバックグラウンドが厳格に調査されます。廃棄物処理法第14条第5項第2号ハ(同法第7条第5項第4号ニなどの準用)に基づき、法人の場合は以下の「関係者」のうち、一人でも欠格事由に該当していれば、会社全体の許可が認められません。
🔍 審査の対象となる関係者の範囲
- 役員全員: 代表取締役、常勤・非常勤を問わないすべての取締役、監査役、相談役や顧問など
- 株主・出資者: 発行済株式総数の「5%以上」を保有する株主、または5%以上の出資をしている個人・法人(みなし役員)
- 政令で定める使用人: 支店長や営業所長など
前回の講習会では「監査役は対象外」でしたが、欠格要件の審査においては「監査役」や「非常勤の取締役」、さらには「5%以上の株主」までがすべて対象になります。 申請前に、これらの関係者の中に該当者がいないかを確実に確認しておく必要があります。
許可取得後の不祥事と「一発取消」のリスク
欠格要件の恐ろしさは、申請時だけにとどまりません。無事に許可を取った後であっても、関係者が不祥事を起こした場合は、会社全体の許可が「一発取消(強制退場)」になります。
連載第2回でも少し触れましたが、毎年全国で200件以上発生している「許可取消処分」の多くが、このケースに該当します。
たとえば、会社の非常勤取締役(あるいは5%以上の株主)が、私生活で他者とトラブルを起こして傷害罪で「罰金刑」が確定したとします。この瞬間、その役員は欠格事由に該当します。 すると、廃棄物処理法第14条の3の2第1項第1号(許可の取消し)に基づき、行政は会社の産業廃棄物収集運搬業の許可を取り消さなければならないと定められているのです。また、傷害罪の怖いところは、「意図して危害を加えた」わけではなくても(例えばケンカの仲裁をしたなど)、略式起訴であっても、欠格要件に該当してしまうことです。
「会社業務とは無関係のプライベートな事件だから」「会社は知らなかったから」という言い訳は一切通用しません。コンプライアンスを経営の武器にするためには、こうした内部のガバナンス(体制維持)を徹底することが不可欠です。
まとめ:事前のスクリーニング(確認)が不可欠です
欠格要件は、申請書類を提出した後に役所が警察庁等へ照会をかけて厳格に調査します。そのため、万が一該当者がいた場合、数万円の申請手数料が無駄になるだけでなく、事業計画そのものが大きく狂ってしまうことになります。
新規参入を検討される際は、講習会の予約と並行して、まずは「役員や主要株主の中に、欠格事由に該当する可能性のある人がいないか」を正しく確認(スクリーニング)することが、リスクのない確実なスタートにつながります。
今回は「4つの要件」の2つ目である欠格要件について解説しました。 次回のブログでは、3つ目の要件である「③ 施設の要件(どのような車両や容器を準備すべきか、その基準)」について詳しく解説していきます。
自社が要件をクリアできているかどうかの診断や、役員構成・株主構成に関する法的な確認でお困りの場合は、どうぞお気軽にご相談ください。
📞 初回相談無料 ✉️ オンライン相談対応可
本記事は2026年6月時点の関係法令および各自治体の審査基準に基づき執筆しています。 Copyright © 2026 AMISTAD GLOBAL
